診察症例:チワワ 5歳 オス 僧帽弁閉鎖不全症
主訴は「遊んだ後に咳が出る」との事でした。
元気や食欲に変化は無いとの事でしたが、聴診時に軽度の心雑音を聴取したため詳しく心機能検査をさせて頂くことをご提案しました。
心雑音はLevine分類というものに当てはめ、症状が6段階のどこに属しているかで評価します。
今回の症例は聴診時に弱い雑音が聴取されたため、Levine分類のⅡに属すると診断しました。
心電図波形
不整脈はありませんでしたが、R波の増高があり左心系の負荷が疑われました。
レントゲン写真
レントゲン検査に関してはVHSとCTRで評価します。
VHSはvertebral heart scaleの事で、心臓の長軸と短軸を計算して表します。
数値としては10.5v以上が心拡大を示しますが、今回の測定では10vでした。
またCTRは心胸郭比の事で、 胸郭の長軸と心陰影の長軸の比を計算した値で65%以下が正常値ですが、54.9%でした。
全ての超音波画像は症例紹介に掲載は出来ませんでしたが、1枚目の右傍胸骨短軸断面では弁膜症により左心房に血液が逆流し、左心房の拡大が認められました。
2枚目の左尾側傍胸骨四腔断面では僧帽弁逆流が確認されました。
当院で行った検査の結果より、ACVIM評価ではStageB2分類される「僧帽弁閉鎖不全症」と診断しました。
症状が軽度で僧帽弁の病態はまだ初期段階で安定していますが、内服による弁膜症の治療を開始することをご提案しました。
また、今後病態の進行に伴い咳が増加したり、運動不耐などの症状が認められるかもしれない事もお伝えし、今後は6カ月~1年毎の定期的な検査をお勧めさせて頂きました。
今回の「僧帽弁閉鎖不全症」は犬に多い心臓疾患です。
加齢に伴い発症する事も多く、今まで元気に過ごしたいたコでも急に咳が増えたり、すぐに疲れたりなどの変化が出てきますが、目に見える症状が出る時には既にACVIM評価ではStageCに属している場合もあります。
またStageが進行している場合は聴診で雑音が聴こえるので、診察時に「僧帽弁閉鎖不全症」を発見する事も多いです。
心臓病は治る病気ではありませんが、薬などでコントロールすれば平均的な寿命を全うしたり、寿命以上に長く一緒に生活を送られる事も出来る可能性があります。
「咳をする」や「疲れやすい」などの症状が多くなってきた場合は年齢のせいにせずに、一度動物病院への受診をお勧めします。