手術症例:ミニチュア・ダックスフント 10歳 オス 鼻汁 歯周病 歯肉炎 抜歯
主訴は「鼻水がひどく、鼻が詰まったような音がする」との事でした。
来院時も鼻水が多い印象があり、検診すると重度の歯周病を確認しました。
そのため鼻水が膿のような性状で分泌され、鼻が詰まったような異音がしていたと考えられます。
歯科処置を行う事が改善の近道ではある事はお伝えしましたが、飼い主様が症状の緩和のための内服を希望されたため初診時は鎮痛剤と抗生剤の処方を行い1週間経過観察としました。
1週間後の来院時に「口を気にする仕草は無くなったが、鼻水の改善も無く、歯が何本か抜けてしまった」との事から再度歯科処置のお話しをして了承して頂きました。
そして高齢な事と抜歯本数が多いため、手術は飼い主様立ち合いで行いました。
処置前
今回は除石と歯肉炎のレーザー照射を行いました。
抜歯については、飼い主様より歯は出来るだけ残してほしいと希望があったため、動揺していた11本の抜歯を行いました。
処置後
今回は動揺歯のみの抜歯を希望されたため、抜歯部の口腔鼻腔瘻の洗浄は膿が無くなるまで何度も行いました。
そして覚醒もスムーズだった事から手術当日に退院しました。
ですが、今回の症例に関しては、動揺歯だけが原因病巣では無かったため、鼻汁は減少しましたが根本的な症状の完治には至りませんでした。
動揺歯でなくても口腔鼻腔瘻の形成は考えられるので、鼻腔瘻好発部位である臼歯の処置についてもご提案はさせて頂きましたが、処置は希望されませんでした。
今回の歯科分野は美容か治療で飼い主様の意見が分かれる部分だと思います。
獣医療を軸としてご提供している当院としては根治を目標としていますが、「歯石を取るだけ」や「可哀そうだから歯は抜かないで」など希望される事も時にはあります。
軽度であればご希望に沿う事も出来ますが、動揺歯が多数あったりする重度の歯周病の場合だと処置の段階で自然に歯が取れてしまう事もあるため、見た目だけの処置には困難な場合もありますし、根本を問題病変の処置を行えずに、少しの改善に留まってしまう事の悔しさもあります。
重度の病気や処置内容に関しても、飼い主様にご理解を得られなければ治療や検査には進めませんので、必要な場合はご理解を頂きたいと思います。