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院長の症例紹介

手術症例:ミニチュア・ダックスフント 12歳 オス 椎間板ヘルニア 胃拡張 MRI

主訴は「昨夜から後ろ足がふらつきだした」との事でした。

 

来院時はふらつきながらではありますが、歩行可能で随意排尿も出来ていました。

レントゲン検査でT11-12間が白く写り、硬化している可能性が高い事から軽度の「椎間板ヘルニア」と診断し、内服と安静にて経過観察としました。

 

img_0397 来院時のレントゲン写真

 

レントゲン検査にて椎間板の他に腹部の膨満が気になりましたが、現段階で飼い主様は消化器症状は出ていないとの事だったので消化器に関しても経過観察としました。

 

その後1週間毎に経過観察のため来院して頂き経過良好でしたが、1カ月後に急に起立困難になったため手術のための脊髄造影を行いました。

 

img_0394 脊髄造影

 

脊髄造影ではL5-L12の造影ラインが消失しており、圧迫病変が広範囲の疑いがあるため、手術を中止し、病変特定のためMRIの撮影を依頼しました。

 

以前もお話ししましたが、脊髄は機能的に4つの領域に分類され、4つの領域の各場所にアルファベットと数字を組み合わせた名称がついています。

ですから今回の様な後肢麻痺の場合にも脊髄のどの部分に問題が生じているか把握がしやすくなっています。

 

MRIの結果ではT11-T12椎間で右腹側から重度の圧迫が確認され、その他にT10-11椎間付近からT12椎体近位まで圧迫物質が認められました。

T11-12椎間での椎間板変性が顕著という、初期のレントゲン検査と同じ結果が得られました。

 

MRI中も嘔吐があり、他施設の獣医師と共に胃拡張の原因を精査しましたが、原因は分かりませんでした。

 

椎間板変性部の特定が出来た事で、MRI検査翌日に手術を行いました。

 

img_0389 椎間板物質除去前

 

img_0390 img_0393

椎間板物質除去後と椎間板物質

 

麻酔中はバイタルは安定していましたが、覚醒時に大量の嘔吐があり、術後は薬剤投与にてモニタリングしました。

その後、活動性も出て、消化器症状が軽減されたため、術後8日目に退院となり、リハビリのため通って頂きました。

創傷経過もよく、16日目に抜糸を行い、リハビリも順調なことから「椎間板ヘルニア」の治療は終了しました。

 

ですが、術後1カ月の時に嘔吐が頻回になり再度来院されました。

 

image レントゲン写真

 

食欲はあるとの事でしたが、胃拡張や腹部膨満があり、消化器の蠕動運動も停滞していたため、蠕動運動を促す薬剤を使用し経過観察としました。

 

img_0432 レントゲン写真(2週間後)

 

2週間後には腹部の膨満は顕著で胃内ガスが溜まっていたため、600mlものガスを抜去しました。

 

胃や腸管の拡張を頻回に繰り返す症状の原因が不明なまま亡くなりました。

 

今回の症例では飼い主様のご希望もあり、MRIやホルモン検査などの様々な検査を行い、他施設の獣医師と話し合いながら診断を行おうとしましたが、原因を追及できませんでした。

「椎間板ヘルニア」の経過も順調だったため、消化器症状の原因が不明なままな事は本当に申し訳ない気持ちでした。

今後も分からない事が出てくるかもしれませんが、原因追及のため様々な経験を積むと共に勉強していきたいと思います。

 

 

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