手術症例:ネコ(雑種) オス 11歳 交通外傷 創傷縫合
主訴は「1カ月前に事故に遭い、顔の皮膚が落ちてしまった」との事でした。
どういった事故にあったのかは不明との事でしたが、左側頬部は壊死のため欠損していました。
1カ月という長い時間が経過した事で、壊死が左側頬部全てに広がってしまった可能性が高い事をお伝えしました。
来院時は食事も1カ月程正常に摂取出来ていなかったという事でかなりの脱水状態で、バイタルも低く、手術中に亡くなる可能性もある事や感染の危険性もあることをお話しした上で飼い主様は手術を希望されました。
手術前検査に関しても、血液検査では軽度の腎不全もあり、炎症を示す数値も高値でした。
事故での外傷は頭のみで、腹部などの部分には骨折などはありませんでした。
時間が経過しても良い結果は得られないため、来院後に脱水改善のために点滴を始め、その後緊急手術を行いました。
今回は首の皮膚にゆとりが比較的多い首部分より移植を考え、マーキングを行いました。
首部分の皮膚を回転皮弁にして、欠損部の補完を行いました。
手術中には徐脈や血圧低下に伴い薬剤投与を行い、麻酔覚醒に関しても時間がかなりかかりました。
その後は術後2日目で飲水を開始しましたが、経過は安定せず、意識レベルの低下の際には緊急処置なども行いましたが、術後5日目に亡くなりました。
今回の症例では手術に踏み切る事を正直悩みましたが、飼い主様の強い希望もあり手術をさせて頂きました。
脱水改善や感染のコントロールなど様々な問題もあり、どの段階で手術を行えば助けられたのかは悩みまし、勉強もさせて頂きました。
今回と同じような症例が当院に来たときは、亡くなったコのためにも助けたいと思います。