診察症例:ペルシャ 8歳 オス 耳垢腺癌
主訴は「1カ月前から右頬が腫れてきた」との事でした。
腫瘤の影響で右耳道も閉塞しており、右下眼瞼にも転移を疑う所見がありました。
また食欲減少のため脱水が中程度ありました。
超音波検査では液体貯留を確認し、腫瘤内の液体を1.5ml抜去しました。
レントゲンでは骨吸収は見られませんでしたが、症状の進行が早い事から、抜去した液体(膿)と一部の組織を病理組織検査に提出しました。
病理組織検査結果は「耳垢腺癌」という悪性腫瘍でした。
今回の外耳道閉塞に至った病変は、外耳道のアポクリン腺である耳垢腺に由来するものでした。
すでに病変が広く浸潤し、転移の可能性が高いという検査結果から、飼い主様と相談し、無理な治療はせずにQOLを第一に考え対処療法を行う方針になりました。
腫瘍は排膿と自潰などを繰り返し、出血も伴っていたため、レーザーを照射し止血を行い、抗生剤の内服で経過を観察しました。
その後は貧血なども徐々に進行し、レーザー治療より5か月後に亡くなりました。
今回の症例である「耳垢腺癌」はあまり聞きなれないかもしれないですが、以前にお話しした肛門周囲の腫瘍と同じアポクリン腺由来の腫瘍です。
外耳炎を繰り返していたり、悪臭が発生していたりして、長期間治療をしても治癒しない場合は今回のような症例の可能性もあるかもしれませんので、詳しい精査をお勧めします。