診察症例:チワワ 12歳 オス 角膜穿孔 デスメ膜瘤 血清点眼
主訴は「同居犬とケンカして、左眼が開けにくそう」との事でした。
角膜にこのような傷を負うと自然治癒では治りません。
また角膜の奥にある通常は出てこないデスメ膜が出てきてしまい、放置すると眼球破裂の可能性もあります。
デスメ膜は眼球破裂の最後の砦でもあります。
今回の症例は高齢で僧帽弁閉鎖不全症を患っており、当院で治療中でした。
心臓の事を考えると外科的な治療は高リスクを伴うので、頻回点眼とエリザベスカラーを付けての安静による治療をご提案しました。
点眼は血清点眼、ヒアルロン酸点眼、抗菌薬点眼を毎日5~7回点眼するようにお伝えしました。
血清点眼とは自己血液から血清のみを抽出して点眼にする方法です。
血清は涙の成分に近く、ヒアルロン酸などの人工涙液では治療が難しい場合にこの方法はよく使います。
今回の場合は体重も1.6kgと小さかったため、初回より血液は沢山採取出来たわけでは無く、1mlほどの血清点眼からスタートし、無くなったら再度採取する方法で、飼い主様にもご協力頂きました。
症状も落ち着いてきたため、抗菌薬点眼を18日後から休薬し、血清点眼とヒアルロン酸点眼で治療を継続しました。
角膜の色素沈着は出ましたが、普段の生活には支障が無いとの事だったので、治療は終了致しました。
今回の症例では眼球破裂の一歩手前でした。
以前からお話していますが、こういった咬傷の場合はすぐの処置が望ましいです。
今回も早く対応させて頂いたので、経過が良好であったと考えています。