手術症例:トイ・プードル 6歳 メス パテラ 膝蓋骨脱臼
主訴は「遊んでいる時に突然後ろ足を痛がる」との事でした。
触診時には痛みなどは無いようでしたが、院内歩行ではやや右後肢の跛行がありました。
触診の結果、両側の膝蓋骨脱臼でグレードⅡと診断しました。
そのため初診時は鎮痛消炎剤の投与で経過を観察し、状態の悪化が見られる場合は再診をお願いしました。
2日後の再診では改善は見られましたが、右後肢の跛行は残りました。
そのため今回は鎮痛剤内服と足に負担のかからない様な生活環境のご提案をし、経過観察としました。
4カ月間は跛行は見られませんでしたが、「ボールで遊んでいたら足を痛がる」との事で今度は左後肢の跛行で再度来院されました。
左後肢はグレードⅢと症状は進行していましたが、飼い主様の希望もあり前回と同様の内服を処方し、2週間経過観察しました。
その後2週間経過しても症状は改善しないため手術についてお伝えしました。
「膝蓋骨脱臼」とはパテラとも呼ばれていますが、名前の通り膝の皿部分(膝蓋骨)が外れてしまう疾患です。
先天性では発育や成長異常、後天性では体重増加や過激な運動などが原因として挙げられ、それにより膝蓋骨が外れてしまい、痛がったり、歩行時に片足だけ挙上するなどの症状が出ます。
今回の場合は6歳という年齢からどちらかは不明ですが、両側に同症状を確認したため、まずはグレードⅢに進行した左後肢の手術を行いました。
原因とされる膝蓋骨を一旦ブロック状に切り出します。
摘出部
膝蓋骨を切り出した部位をトリミングし、溝を深くします。
ブロック状に切り出した膝蓋骨を深くした溝に戻し、手術は終了です。
術後2日目で退院し、術後12日目で抜糸を行い治療は終了としました。
その後1カ月毎に来院して頂きましたが、経過は良好で術後から2カ月頃には歩行もスムーズでした。
ですが、まだ右後肢の膝蓋骨脱臼も残っているため経過を注意していきたいと考えています。
今回の「膝蓋骨脱臼」は小型犬~大型犬まで様々な犬種で起こりえる疾患です。
グレードⅡまでの場合は鎮痛消炎剤やサプリ、安静などで経過を見る事も多いですが、それ以上の場合は手術が適応になってきます。
またグレードⅢ以上の経過が長い場合は軟骨の損傷も激しくなり、術後も跛行が残る場合もあります。
跛行が続く場合はご自宅で経過を見るのではなく、動物病院への受診をお勧めします。